レトルト食品

レトルト食品

世界で最初に市販化されたレトルト食品が日本が初ということをご存じでしたか。昭和43年に販売された「カレー」のレトルト食品がそれです。以来、調理の効率化に加えて、実は健康でおいしく、万一の災害時にも役立つ食品として、普及してきました。今回は、そんなレトルト食品の豆知識を紹介しましょう。

1. そもそもレトルト食品とは

レトルトとは、袋詰め食品などを加熱殺菌する釜のことで、ここからレトルト食品という言葉が名づけられました。すなわちレトルト食品とは、食品をパウチ(袋状のもの)、または成形容器(トレー状など)に詰めて密封した後に、レトルト(加圧加熱殺菌装置)で殺菌したものをいいます。
常温で長期間保存できること、軽量で取り扱いやすく簡単に開けられること、わずかな時間で温められること、さらに容器の廃棄処理がしやすいことなどの商品特徴から、多くの生活者のニーズに応え、今や家庭では欠かせない食品のひとつとなっています。

2. 製造原理は1804年、宇宙食で有名に、そして日本が初

レトルト食品は常温で長期間保存できますが、これにはフランスのナポレオン帝政期の1804年に、ニコラ・アペールにより発明された「容器に食品を詰め密封した後、加熱殺菌することで長期保存を可能とする」という製造原理が利用されています。ちなみに、アペールは1810年に陣中食の長期貯蔵法の懸賞募集に応募し21,000フランの賞金を得ているそうです。
レトルト食品としての研究開発は1950年頃、アメリカ陸軍ナティック研究所が包材の開発と製品化に着手したことにより始まりました。そして、一般的にレトルト食品が知られるようになったのは、1969年に打ち上げられた月面探査船アポロ11号に「Lunar-pack(牛肉、ポトフなど五品目)」として積み込まれ、宇宙で食べられてからでした。
一般に市販され私たちが手にできるような製品になったのは実は世界でも日本が初です。昭和43年(1968年)にレトルトパウチに詰められたカレー製品が販売されたことにより始まりました。

3. アジアで普及しているレトルト食品

レトルト食品は、歴史からなぞると欧米諸国で普及しているようにみえますが、実はアジア地域で普及している食品なのです。背景には調理法の違いもあるようです。
欧米諸国では1960~70年代に家庭用としてのレトルト食品の実用化が試みられましたが、商品としては育ちませんでした。大型の冷凍冷蔵庫が早くから普及しており常温保存の必要性が高くないこと、ローストするなどオーブンでの加熱調理が食事作りの基本であるためなどが理由として考えられます。
それに対して、日本も含めてアジアでは、湯を使う(ゆでる、蒸すなど)調理法が一般的で、このことが湯で温めて食べるレトルト食品のアジアでの普及につながっているといえるでしょう。
流通量の多い国は、韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、中国で、これらの国では国内向けばかりではなく、輸出向けの生産も行っていて、タイからはツナやカレーなどが日本にも輸出されています。

4. 実は優れもののレトルト食品

レトルト食品に関するある調査によると「添加物が多く含まれる」「殺菌料・保存料が多く含まれる」などといったイメージをもつ人が多くいるそうです。
実はレトルト食品は殺菌料・保存料を使用せず、パウチ(トレー)に密封後レトルト殺菌することにより長期常温保存が可能で、品質の変化がほとんどない食品なのです。
これは、一般的に「レトルト(加圧加熱殺菌装置)」により、120℃以上で4分間以上高温高圧殺菌を行っていること、空気や光による影響を受けないように、開発されたパウチ(トレー)が使われていることからです。
食品衛生法でも、缶詰、びん詰、レトルト食品を含む「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」の殺菌方法について、一定の基準を設けており、微生物の繁殖などの問題はありません。
添加物についても、保存料が入っていると思われがちですが、「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」には保存料、殺菌料を使ってはいけないことが、食品衛生法で定められています。
また、レトルト食品は加熱殺菌をするため、栄養成分の損失が大きい、あるいは残っていないなどと考えられがちです。フレッシュな食品と比べると加熱による影響はありますが、真空状態で処理されるので、実はビタミンなどの栄養成分の消失が少ないのです。

5. 備蓄食・非常食に最適

レトルト食品は、常温で長期間保存でき、調理済みなので、すぐに美味しくそのまま食べることができます。
また、多くのレトルト食品は1食分の内容量で作られていますので、必要な人数に合わせて必要量を準備することができます。
さらに、カレーやどんぶりの素などたくさんの種類があるので、お好みのものを選ぶことができます。
以上のことから、万一の災害時に役立つ備蓄食・非常食としても最適な食品です。

協力:公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会
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