スポーツチャンバラ

スポーツチャンバラ

最近ではチャンバラごっこをしたことがある子どもは少なくなってきているかもしれません。一昔前のように、刀の代わりに木の棒などを振り回して飛び回るようなことは、今ではなかなかできません。今回は、思いっ切り刀を振り回したり、動き回ったりすることができて、なおかつ安全な、スポーツとしてのチャンバラ、その名も「スポーツチャンバラ(略してスポチャン)」をご紹介します。

1. スポーツチャンバラってどんなスポーツ

スポーツチャンバラとは刃の部分を空気で膨らませたエアーソフト剣と、ポリカーボネート製の面という防具を用いてチャンバラを安全に行えるようにしたスポーツです。護身道から発展し、1971年に始められました。剣道と違い、十分な威力であるならば体のどこを打ってもよく、逆にどこを打たれてもいけません。
エアーソフト剣(得物(えもの)といいます)は、刀のような形状の物だけではなく、槍(やり)や棒など形も長さもさまざまなものがあります。盾を使う種目や二刀流、異なる得物で対戦する異種の部があるのが特徴です。

2. スポーツチャンバラのルールと種目

試合場は6~9m四方。1試合3分間の三本勝負または1試合1分間の一本勝負で行われます。
両足が試合場から出ると「場外反則」となり、2回で反則負けとなります。剣の柄(持ち手の部分)が相手に当たるのも反則です。

主な得物には次のようなものがあります。

小太刀(全長60cm以下)、長剣(全長100cm以下)、杖(全長140cm以下。刃は両端)、棒(全長200cm以下。刃は両端)、槍(全長200cm以下。刃は片端のみ)、短刀(全長45cm以下)。
これらの得物を使う各種目のほかに、盾を組み合わせた盾小太刀、盾長剣、盾短刀などの種目があります。
また、小太刀と長剣など2本の剣を持つ二刀の部もあります。ちなみに日本では二刀流といえば宮本武蔵を思い起こす特異な構えですが、世界的には比較的ポピュラーな構えだそうです。

異種の部は刀と槍、二刀と槍など異なる得物を使った対戦です。同じ技量であれば、剣が長い方が有利に思われるかもしれませんが、手元に飛び込まれたり、得物を押さえられたりすると、長さが邪魔になることもあり、短いものが勝つ場合もあります。大人対子どもの対戦などで、長さが違う得物を使い、ハンディをつけることもできます。

1対1の対戦のほかにも、多人数で行う種目があるのも楽しい点です。
合戦は20人対20人、50人対50人など多人数が二手に分かれて戦います。人数が多く審判が勝敗を決するのが難しいので自己申告制とします。効果的なダメージを受けたと自覚した者は、試合場から出るか、その場に座るなどします。合戦の狙いは、自覚にあります。自覚の足りなさや卑怯な振る舞いがあれば、試合は成立しません。スポーツチャンバラの目的の一つに人格形成がありますが、これを育てるためには合戦が格好の舞台といえます。
1人対2~3人あるいは2人対3~5人などが一度に戦うのが乱戦です。乱戦では、1対1では得られない、左右前後の気配りやお互いの連携、または集団の中での自分の役割など、多くのことを学ぶことができます。
大人1人対子ども2人とか、先生やチャンピオンに3人がかりとか、さまざまなバリエーションで楽しみながら公平感の持てるような工夫ができます。

3. 大会と段・級

主な大会としては、令和元年に第45回が開催された全日本選手権大会や、平成6年以後、全日本選手権大会とは別に単独開催となった世界選手権大会があります。学生選手権大会や高校生以下を対象とした少年少女選手権大会、幼児を対象とした幼年選手権大会もあります。
また、国民体育大会には平成15年の静岡県わかふじ国体にデモスポ競技(デモンストレーションスポーツ)として初参加以降、たびたびデモスポ競技として参加しています。
段・級は種目ごとに取得します。級は、幼児でも取得可能な10級から始まって1級まで(1級は小学6年生から中学生が目安)、段は初段から最高十段までです。
段・級は単に「試合に強いから」与えられるものではなく、自分がどれだけ熱意をもって稽古したか、理解の深さはどうかを確認するものです。そのため、たとえば昇級の合格基準には礼儀作法、元気な態度、大きな声も重要とされています。

4. スポーツチャンバラの魅力

日本の剣術とヨーロッパのフェンシングではどちらが強いでしょう。槍と二刀ではどうでしょうか。今までは、お互い公平に、そして誰でも安全に戦える場がありませんでした。
ところが、スポーツチャンバラでは、それぞれの国の剣の特徴を兼ね備えた安全な剣を持ち、重い防具と難しいルールを取り払うことで、世界の誰とでもフェアーに競い合うことができるのが魅力です。
また、安全な用具を使うことでけがの心配も少ないことから、子どもから大人・高齢者まで、男女の区別もなく同じ条件で、誰もが楽しめる生涯スポーツといえるでしょう。
全国各地のクラブ・道場などで、体験・見学ができますので、みなさんも童心に帰って、ひと暴れしてみませんか。

協力:公益社団法人 日本スポーツチャンバラ協会
住所:〒231-0033 神奈川県横浜市中区長者町2-5-4 (白井ビル1101)
H P:http://www.spochan.or.jp