クルミ(胡桃)

クルミ(胡桃)

硬い殻にくるまれたクルミが脚光を浴びているようです。健康によいと注目されているオメガ3脂肪酸がナッツ類で最も多く含まれているからです。オメガ3脂肪酸は、細胞膜の構成要素のひとつであり、体の調整物質のひとつで、動脈硬化を防ぎ、コレステロール値、中性脂肪値を下げるなど、生活習慣病予防に効果・効能が発揮されるといわれています。今回は、そんなクルミについての豆知識をお届けします。

1. クルミの歴史

硬い殻を割る目的に使われた石器が、アメリカやヨーロッパの各地で発掘されており、これらの年代は4000年前から8000年前までにさかのぼれるそうです。
クルミは、北半球の世界各地で栽培されており、その基本種はペルシャグルミです。原産地は古代ペルシャともいわれ、これが地中海を渡りヨーロッパに伝えられてペルシャグルミの名が付いたといわれます。ペルシャグルミが東回りして中国(胡)、朝鮮から日本に渡ったことから胡桃と呼ばれるようになったともいわれています。そしてその東回りの変種がテウチグルミです。
日本では、テウチグルミが交易によって運ばれ、平城宮跡からも出土していますので、早いもので弥生時代に古代中国から入ってきたものと推定されます。また、西回りの栽培種ペルシャグルミは江戸時代から明治時代にかけて朝鮮半島やアメリカから日本列島に入ってきました。

2. クルミの種類

食用にできる主なクルミの品種には次のようなものがあります。

  • ペルシャグルミ(西洋グルミ)
    ペルシャグルミはイランを原産地とするクルミの代表格です。ペルシャグルミは2000年前から栽培されていたと推定され歴史も古く、多くの食用クルミの原種になっています。
    日本で一般的にクルミといえばペルシャグルミのことをさします。
  • テウチグルミ
    テウチグルミは中国を原産地とするクルミで、ペルシャグルミの変種ともいわれています。
    テウチグルミは漢字で「手打胡桃」と書きますが、その由来は手(手打)で簡単に割れることからきています。
  • オニグルミ
    オニグルミは日本に自生しているクルミです。オニグルミは九州から北海道まで広く分布しており、日本で古くから食用とされ、多くはありませんが現在も栽培されています。
    オニグルミの特徴はその名前のとおり鬼のように硬くゴツゴツした殻です。オニグルミは割るのが大変ですが、味は渋みがなく、風味がよいのが特徴です。

3. 片手でも割れるクルミが日本に

スーパーなどで実の部分だけが袋詰めにされ、手軽に食べられるようになっていますが、クルミの殻は非常に硬く、ドイツの伝統工芸品となっているクルミ割り人形をはじめ、専用のクルミ割り器でないとうまく割れません。
ところが、「クルミは殻が硬い」という定説を覆すクルミが、信州の東信地方にあります。長野市の南に位置する東御市(とうみし)は、全国有数のクルミの産地です。そこで栽培されているクルミの特徴は「手で割れるくらい薄い殻」で、片手でも割ることが可能です。信濃クルミともいわれ、ペルシャグルミとテウチグルミを交配して作られたクルミです。
東御市がクルミの里となったのは、かつて大正時代になってすぐ天皇の即位を記念してこの地域の全戸にクルミの苗木が配られたことがきっかけでした。その後の歴史の中で産学官(JA信州うえだ、長野県、東御市、信州大学)が生産者とともに協力しあって、研究を重ね、優良品種の選抜・育成を行い、大玉で風味がよく、濃厚な味で「うす殻」のクルミが生み出されたといわれています。

4. 食べ過ぎには注意

クルミは、100gで約670キロカロリーもある、高エネルギー食品です。果肉の6~7割が脂肪分です。高たんぱくでビタミン、ミネラルも豊富な食品ですが、食べ過ぎはかえって害になりますので注意が肝心です。特に、高齢者は食べ過ぎないように気をつけましょう。

協力:JA長野県
ウェブマガジン「長野県のおいしい食べ方」
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